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2007年07月号-2 |
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介護保険法改正に向け検討会発足 |
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〜事業者規制や事前届出の在り方議論 次期通常国会に法案提出 |
厚生労働省は19日、介護保険法の見直しに向けて議論する「介護事業運営の適正化に関する有識者会議」(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)を設置した。広域的な介護サービス事業者への規制の在り方や法令遵守のための必要な措置、事業廃止時の利用者へのサービス確保に必要な措置について検討する。今秋をめどに結論を出し、来年の通常国会に改正法案を提出する予定だ。 コムスン問題に代表される介護報酬の不正請求や人員配置の虚偽申請など、介護事業者の不正が後を絶たない。現在事業所の廃止届の提出は廃止の日から10日以内となっているが、処分逃れを目的とした廃止が起こっていることから、事前届出制にすることなどが俎上に載るとみられる。 有識者会議で櫻井敬子委員(学習院大学法学部教授)は「民間事業者は制度の隙をついてくる。民間はスピードも知恵もある。それに対し行政は手間暇が手間がかかり適時適切な対処ができない」と、民間事業者に対し行政側が十分対応できていないとの認識を示した。さらに、コムスン問題で新規に指定・更新をしないよう都道府県知事に命じた通知や、コムスンに利用者移行計画作成という指示が法的な強制力を持たない行政指導であることから「相手が指示内容に従うという保証がない。事業者に開き直られると拘束力がないので国民に不利益が生じることになる」と、国や自治体の干渉の仕組みについても問題があるとした。
■「法人のガバナンス反映法が課題」神作委員 神作裕之委員(東京大学大学院法令政治学研究科教授)は現在の規制が事業所単位になっていることに「会社法で法令遵守は事業所単位ではなく法人単位となっている。生活密着という介護サービスの特色も分かるが、ガバナンス(統治)の要所はトップが占めているのだから、事業所単位と法人との関係を整理する必要がある」と、法人のガバナンスの反映方法が課題とした。一方で、「制度がうまく機能するには柔軟で多様な仕組みが必要」と、法律ですべてがんじがらめにすることは困難とした。 都道府県の介護保険担当者は法律での規制強化を要望した。小島通委員(愛知県健康福祉部長)は「事業所廃止の申し立てを防止する必要がある」として、事前廃止だけではなく監査を開始してからは廃止申請をできないという法整備を求めた。利用者の立場から木間昭子委員(高齢者をよくする女性の会理事)も「介護保険が規制緩和でいろいろな事業主体が入るのにこんな規制でよいのかと思う」と、規制強化を支持した。
■コムスン問題受け、見直しへ 昨年4月施行の介護保険法改正では事業者規制を強化し、同一法人の同類型のサービス事業所で指定取消処分などを受けた場合、5年経たなければ指定を更新できないとする連座制を導入した。しかし、訪問介護最大手のコムスンが実際には存在しない職員名簿で指定申請するなどの不正を行い、自治体の監査時に廃止届を提出するなど制度の隙を縫って処分逃れを行っていたことが判明した。これを受けて東京都は7月、▽事業者の廃止届を事前届出にする▽欠格事由の対象に同一資本グループ内の法人役員の追加▽指定更新や取り消しの判断基準の明確化▽不正な手段で指定を受けた場合や不正請求への罰則規定の設定−などを緊急提案し、制度見直しを求めていた。 |
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2007年07月号-1 |
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医業収支差額比率「入院は黒字、外来は赤字」 |
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〜中医協に分科会が報告 部門別収支で明らかに |
診療報酬調査専門組織医療機関のコスト調査分科会の田中滋分科会長は18日、中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(小委員長・土田武史早稲田大学教授)に対し、診療科別医業収支差額比率について、「全体的な傾向として入院は黒字、外来は赤字」と報告した。医療機関の部門別収支、医療サービスコスト、IT科に関するコスト、医療安全・質に関するコストの各調査について結果報告し、部門別収支では「診療科部門別収支計算手法は一定の汎用性が確認できた」として、費用の配賦手法が確立できたと述べた。 部門別収支に関する調査の対象は、事前調査も含めDPC対象病院、DPC準備病院の731病院のうち100病院。このうち67病院について集計した。 その結果、入院外来別の医業収支差額比率(医業収支−医業費用)÷病院全体収益)の分布を見たところ、入院は多くの診療科で黒字傾向にあるものの、外来は赤字傾向にあった。田中分科会長は外来について「すでに発生している人件費などの固定費を配賦すると、短期的なキャッシュフローでは黒字になるが長期では赤字になる」として、DPCに関する病院では経営面からは入院を中心にした方がメリットは大きいとの見解を示した。 この結果について石井暎禧委員(日本病院会常任理事)は「実感と違うところがある。外来が赤字だからといって、外来がなければ入院患者も入ってこない可能性がある。例えば検査は外来と共用しているから稼働率を保てるということもある」と入院や外来だけを見て黒字か赤字かを判断することに疑問を呈した。
■コスト計算手法ほぼ確立 DPC別の原価推計(医療サービスコスト)に関して田中分科会長は、「1症例、1日当たりコストは4万8822円で、過去2年間の研究をほぼ同様の結果が得られ、原価推計方法の安定性が改善した」と、調査結果からコスト計算手法についても手法がほぼ確立してきたものとの認識を示した。 |
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