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2023年06月号-2
都市部でも公民館でオンライン診療、年内に結論
政府
 政府は 16 日の臨時閣議で、新たな規制改革実施計画を決定した。医療分野では、公民館などに医師が常駐しないオンライン診療のための診療所を都市部でも開設できるようにすることについて引き続き検討し、年内に結論を得る方針を示した。デジタルデバイスに明るくない人への医療を確保する狙いがある。
 オンライン診療の受診場所を巡っては、厚生労働省が 5 月 18 日、へき地など受診機会が十分に確保されていない場所で医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を特例的に認める事務連絡を自治体に出していた。
 新たな規制改革実施計画では、へき地などに限定せず都市部などでも同様の診療所の開設を容認するかどうかの結論を 2023 年中に得るとしている。

●診療所管理者の常勤要件緩和、9 月末までに結論

 診療所の管理者については、医療法に規定する管理者の責務を果たす必要があることから、原則として勤務時間中は常勤しなればならない。ただ、そのために新たに管理医師を配置した上で診療所を開設することが困難だとの指摘がある。
 こうした状況を踏まえて厚労省は、医療提供体制が不足していると都道府県が認めれば他の診療所の管理者がへき地や「医師少数区域」などの診療所の管理者を兼務できることについて検討し、9 月末までに結論を出す。

●特定行為の範囲拡充を検討

 厚労省はまた、特に地域の小規模な医療機関での外来看護や訪問看護などで活躍できる特定行為研修の修了者の養成を促す。
 現行の特定行為研修は、一般の看護師や医療機関にとって受講に要する時間と費用に係る負担が重いという調査結果が示されていることを踏まえ、▽研修について国の関与の下で、現場でのアウトカム評価でも代替可能とする▽アウトカム評価が困難な部分に関しては看護師の日常業務の空き時間での長期にわたる研修を可能とする▽オンライン研修の活用を進める−ことを検討し、遅くとも 24 年度までに措置を講じる。
 さらに、診療の補助である特定行為(現在は 38 行為)について、運用状況や地域医療でのニーズの把握を行った上で範囲の拡充を検討し、25 年度までに結論を出す。
 ほかにも規制改革実施計画には、▽医療データの二次利用に当たって患者らの本人同意を不要とすることの検討▽24 時間対応できる薬局が存在しない地域について在宅患者へ円滑に薬剤を提供する体制整備に向けた検討▽プログラム医療機器(SaMD)について保険外併用療養費制度の活用も含めた新たな仕組みを設ける方向での保険適用の検討−なども盛り込んでいる。

●介護サービスの人員配置基準見直し盛り込む

 新たな規制改革実施計画には、介護分野の項目も盛り込まれた。介護サービスにおける人員配置基準を見直して管理者が複数のサービス事業所を管理できる範囲の緩和や、手数料の高額化が問題視されている有料職業紹介事業について、業者への集中的指導監督を行うことなどが明記された。具体的には▽介護サービス管理者の人員配置基準の見直し▽医療・介護・保育分野の有料職業紹介事業などの制度の見直し▽科学的介護情報システム(LIFE)による情報の活用の周知や、LIFE 入力負担軽減に向けた重複項目の解消▽介護報酬におけるアウトカム評価の在り方の検討―など。
 人員配置については、さまざまな介護サービスを行う複数の事業所を効率的に運営する観点から、管理者がサービス種別にかかわらず同一・隣接、または近接の敷地にある複数の事業所について、兼務可能な範囲を見直す。
 また有料職業紹介事業については、人手不足を背景に求人者が紹介事業者に支払う手数料の高額化への対策や、いわゆる「お祝い金」などの名目で「社会通念上相当」と認められる程度を超える金銭の提供を禁止することを徹底するため、厚労省が 2023 年度中に紹介事業者への集中的指導監督を実施する。
 このほか、深刻化する人手不足に対応するため、技能実習の対象職種・分野についても見直す。在留資格「特定技 1 号」と「特定技能 2 号」の対象となる分野の追加について検討する。
 特に「特定技能 2 号」については速やかに検討を進め、具体的な措置を講じるとした。

2023年06月号-1
診療報酬改定 DX、26 年度から本格実施
医療 DX 推進本部
 「医療 DX 推進本部」が 2 日開かれ、岸田政権が医療分野で推進する DX(デジタルトランスフォーメーション)のメニューや実施時期を盛り込んだ工程表を決定した。医療 DX の 3 つの柱のうち、診療報酬改定 DX は、共通算定モジュールの提供を 2026 年度から本格実施する。それに先立ち、先行医療機関で 25 年度にモデル事業を行い、モジュールの改善を進める。
 医療 DX は、骨太方針 2022 に盛り込まれた。診療報酬改定 DX のほか、▽全国医療情報プラットフォームの創設▽電子カルテ情報の標準化と標準型電子カルテの検討−が柱。
 医療 DX 推進本部が 22 年 10 月の初会合で具体化の議論を始め、23 年春に工程表を作ることになっていた。
 岸田首相は 2 日の会合で、医療 DX は「サービスの効率化や質の向上により国民の保健医療の向上を図るなど、わが国の医療の将来を大きく切り開いていく」と述べた。
 診療報酬改定 DX では、医療機関が算定する診療報酬の点数と患者の窓口負担を自動で計算できる「共通算定モジュール」を提供し、医療機関の窓口業務の負担軽減につなげる。
 また、診療報酬改定が施行される時期を現在の原則 4 月から、後ろ倒しする。2 年置きの診療報酬改定を挟み、医療機関やベンダーが 2−5 月ごろ膨大な業務に追われる「デスマーチ」の解消を目指す。
 工程表によると、共通算定モジュールは 23−24 年度に設計・開発し、先行医療機関に 25 年度に「α 版」を提供する。共通算定モジュールの提供は 26 年度から本格実施し、機能を順次追加しながら、対象医療機関を拡大する。
 診療報酬改定の施行をどれだけ後ろ倒しするかや、いつの改定から実施するかは、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえて検討する。

●電子カルテの情報共有遅くても 30 年に

 一方、電子カルテ情報の標準化は、患者の医療情報を全国の医療機関で共有できるようにするために進める。薬局とも情報共有できるよう、薬局側のレセプトコンピューター・薬歴の標準規格への対応も検討する。さらに、診療や情報共有に必要な最低限の機能を搭載し、データの標準規格を採用したクラウド型の「標準型電子カルテシステム」も開発する。導入コストを抑え、診療所など小規模な医療機関への普及を促す。
 工程表によると、医療情報を共有するための電子カルテシステムを遅くても 30 年にはおおむね全ての医療機関に導入することを目指す。

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