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2013年05月号-2
訪問看護ステーションの評価、「規模よりも機能」で
〜中医協で、大規模化に否定的な意見が相次ぐ
 2014年度の診療報酬改定に向け厚生労働省は5月29日、在宅医療の具体的な検討を中医協総会でスタートさせた。今回取り上げたのは、@訪問看護、A在宅歯科医療、B薬局における在宅業務──の3項目で、訪問看護に約1時間半を費やした。最大の焦点は、訪問看護ステーションの大規模化。厚労省は、「訪問看護の需要は増加」、「看護職員5人以上のステーションは増加傾向」などのデータを示し、「今後、訪問看護ステーションの規模や機能の評価について、どのように考えるか」と意見を求めたが、規模の大小よりも機能や連携を評価すべきとの意見が多かった。

■訪問看護の推進に向けた課題と論点

【課題】
 ○ 訪問看護の需要は増加しており、また、利用者像が多様化している。
 ○ 患者が訪問看護に求めることとして、「24時間対応」や、「病状が重くなった際の対応」「頻回な訪問でも対応してもらえる」が上位を占めている。
 ○ 検証結果では、看護職員5人以上のステーションや、ステーション従事者数は増加傾向にある。規模の大きい事業所ほど、がん末期や神経難病等の頻回な訪問が必要な重度者を多く抱えている。

【論点】
 平成24年度診療報酬改定の効果がみられているが、今後、訪問看護ステーションの規模や機能の評価について、どのように考えるか。

 日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏は、「地方では病院の看護師も集まらないのに、訪問看護ステーションの看護師はさらに集まらない」と語気を強め、地域の実情に配慮するよう求めた。全日本病院協会会長の西澤寛俊氏も、「規模が大きければ良いとは限らない。何十人も看護師がいるステーションはイメージがわかない」と述べた。
 支払側からも同様の意見が相次いだ。全国健康保険協会東京支部長の矢内邦夫氏は、訪問看護ステーションのニーズが高まっていることを指摘したうえで、「まだまだ患者ニーズに応えきれていない。規模が大きい所を評価するということだけでは、問題は解決しない」として、小規模なステーションが連携することに対する評価を求めた。
 愛知県津島市長伊藤文郎氏は、「在宅医療の中心は訪問看護」としたうえで、「小さな事業所でも対応できる体制を整えていくことが必要。1つの事業所は3人の看護師でも、3か所に1人ずつ配置してそれぞれ対応して、できるだけ移動時間を短くしていく。そういう機能を評価しないと、訪問看護が行き渡らないのではないか」と述べた。
 健康保険組合連合会専務理事の白川修二氏は、「例えば、自宅で仲間と訪問看護ステーションをやっていて、呼び出しがあったら行くという、そういう訪問看護ステーションがあってもいい。機能や必要性に応じてバリエーションを付けていく、弾力的なやり方が必要ではないか」と提案した。
 日本看護協会常任理事の福井トシ子氏は、大規模なステーションと小規模なステーションとの役割分担の必要性を強調。日本病院会常任理事の万代恭嗣氏も、ステーションの連携機能を評価するよう求めた。このため、訪問看護ステーションの連携に関する具体例などを日本看護協会から示してもらい、それを踏まえて引き続き検討することで議論を終えた。


2013年05月号-1
医療・介護情報をネットワークで関係者が共有する社会を
〜IT戦略起草委員会の渡辺委員が提起
 「自宅でネット受診」「ネットで服薬指導」──。インターネット技術の進歩に伴い、医療提供体制も変わるだろうか。医療・介護情報をネットワークで関係者が共有し、自宅で療養できる仕組みが提案されている。
 世界最高水準のIT社会の実現に向けたIT戦略を再構築するため、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)に設置されている「IT戦略起草委員会」では、これまでに2回の委員会を開き、新たな戦略に盛り込むべきビジョンや戦略の骨子素案などを検討している。この中で、渡辺捷昭委員(トヨタ自動車相談役)が「新たなIT戦略の策定に向けて」と題した資料を提出し、「病気の子供や介護が必要なお年寄りも自宅で無理なく看護できる社会の実現」の必要性などを指摘している。 (次ページへ続く)

■新たなIT戦略の策定に向けて

 1 使い勝手のよい電子行政の実現
 2 公共データを活用した、より安心、安全、快適な社会の実現
 3 病気の子供や介護が必要なお年寄りも自宅で無理なく看護できる社会の実現
 4 ITSを活用した世界一安全安心なモビリティ社会の実現

 渡辺委員は「新しいIT戦略では、オールジャパンとして以下の4点に取り組んでいただきたい」として、「使い勝手のよい電子行政の実現」など4点を要望している。
 戦略の策定・遂行については、「一企業や単独の省庁でできるものではない」と断じたうえで、産学官連携などの必要性を指摘。IT戦略の成果を「世界へ輸出できるようにする」ことを求めている。

■戦略の策定、遂行の留意点
 
 1 IT戦略の推進は一企業や単独の省庁で出来るものでなく、省庁間、国と地方、企業間・産業間、産学官の連携が不可欠。「連携」と「リーダーシップ」をキーワードとしてオールジャパンで取組むこと
 2 ITは手段であり、導入にあたっては、既存業務の見直し、BPRを徹底的に行い、PDCAサイクルをしっかりと廻していくこと。特に、イノベーションの足枷になっている、古い規制や制度は、徹底的に見直すこと。
 3 3〜5年後、さらには、6〜10年後の目指す社会の姿を描き、当面の取組も含めて、「誰が、いつまでに、何をするのか」を明記したロードマップを示すとともに、中心となる「組織」「人」を決定し進めること
 4 実証実験で終わらせること無く、新産業・新事業の創出につなげていくためにも、成功モデルを実現し、その成果を横展開するとともに、そのハード・ソフトを世界へ輸出できるようにすることも検討すること

 新たなIT戦略の策定に向けて渡辺氏が要望した4項目のうち、「病気の子供や介護が必要なお年寄りも自宅で無理なく看護できる社会の実現」については、新戦略で実現する10年後の社会イメージとして、本人の同意のもとに、医療・介護情報をネットワークで関係者が共有し、匿名化データを2次利用することを提案。インターネットを利用した「ネット受診」、「ネット服薬指導」などを挙げている。

■医療・介護情報をネットワークで関係者が共有

 1 蓄積された本人の医療情報・画像情報とその日の様子をもとに、病院・かかりつけ医が診断し、患者は自宅で静養しながらネット受診
 2 医師から処方箋が直接薬局へ送られ、薬が宅配されるとともに、薬局・薬剤師がネットで服薬指導
 3 匿名化された公共データの公開による治験・創薬

 渡辺委員が掲げる目標は、本人・家族の負担軽減、QOLの向上、病院・診療所・薬局の待ち時間ゼロ。そのための課題として、1)医療情報の電子化・ネットワーク化の推進、2)医療情報や介護情報等連携共有する電子情報の標準化等、3)患者情報共有時の包括同意のあり方検討、モデル化――を指摘。ロードマップを「1年以内」と「3年以内」に分けて示している。

■ロードマップ

 1年以内(2013年度中)
(1)医療等情報の利活用と保護のための法制度環境整備に向けた検討開始(3年以内に結論)──内閣官房・厚生労働省・総務省
(2)遠隔診療が有効な症例・処方箋の電子的受け渡しのための基準の検討開始(3年以内に結論)──内閣官房・厚生労働省・総務省
(3)匿名化された医療情報の2次利用に関するガイドラインの検討──内閣官房・厚生労働省

 3年以内(2015年度中)
(1)利用目的・範囲・体制・罰則規定・包括同意のあり方、本人特定手法などの法制度環境の整備──内閣官房・厚生労働省・総務省
(2)医療情報や介護情報等(病名ID、フォーマット等)の標準化──内閣官房・厚生労働省
(3)医療情報の電子化・ネットワーク化の推進(医院、診療所等の電子化促進──厚生労働省・総務省

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