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2022年10月号-2
出産育児一時金増額は賛同も費用の見える化が課題
社保審医療保険部会
 厚生労働省は10月13日、「社会保障審議会医療保険部会」(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催し、現在、医療保険制度改革の一環として引き上げや後期高齢者への負担拡大を検討している出産育児一時金について、さらに、2024年から開始される「第4期医療費適正化計画」策定に向けた討議を行った。

●出産費用の細かな分析や見える化を要望

 同日の医療保険部会では、出産費用(正常分娩)が年々増加する一方で、都道府県によって大きな差がある実態が明らかにされた。わが国の深刻な少子化の状況を踏まえ、多くの委員より出産育児一時金を増額することへの賛同は得られたが、出産費用に関する細かな分析や見える化を求める意見が上がった。
 また医療費適正化計画について事務局は、大枠の検討事項を、▽現行の目標についてどういった点を更に推進すべきか、▽新たに取り組むべき目標はないか、▽取り組みの実効性を確保するための体制をどう構築するか――の3点に整理し、それぞれについて個別の論点も委員へ提示した。
 具体的には、医療資源の効果的・効率的な活用について、効果が乏しいエビデンスがあることが指摘されている医療(例:風邪に対する抗菌薬処方)や 医療資源の投入量に地域差がある医療(例:白内障手術、化学療法の外来での実施)について、適正化を推進する。リフィル処方箋の取り扱いも論点として提示した。

●全国の妊婦合計負担額は47万3315円

 出産育児一時金は、健康保険法等に基づく保険給付として出産に要する経済的負担を軽減するため一定の金額が支給される制度(被用者保険は政令、市町村国保は条例でそれぞれ規定)であり、現在は原則42万円(本人支給分40.8万円+産科医療補償制度の掛金分1.2万円)を支給するとされている。
 同日の医療保険部会で事務局は、近年、出産費用(正常分娩)は年間平均1%前後で増加し、2021年度の全国の妊婦合計負担額は47万3315円(17年度比で114%)、都道府県別には最も高い東京都が56万5092円であるのに対して、最も低い鳥取県では35万7443円となっており自治体によって1.5倍以上の格差があると説明した。さらに、厚生労働科学特別研究事業として今年7月に実施したwebアンケート「妊産婦のニーズに適合した産科医療機関の選択に必要な情報の内容と提供方法の検討のための研究」の結果において、自宅住所のある県と異なる県での出産(都道府県別の流出率)は東京都が最も高く、次いで神奈川県、千葉県、埼玉県と首都圏が上位を占める一方で、流入率は鳥取県が最も高く近隣県からの流入を認め、この背景として出産費用の安さが影響している可能性が想像されるという。東京都への流入率は45位と低い水準だった。
 また、出産施設選択時の情報について、「出産にかかる費用の説明方法」「出産にかかる費用の説明内容」の2項目の入手度が最も低い反面、情報収集の満足度に関しても同じ2項目が最も低い結果となっていると報告した。

●出産育児一時金にかかわる3つの論点を提示

 事務局は出産育児一時金について、▽施設種別、費目、地域による出産費用の違いなどを含め出産育児一時金の引上げ額をどう考えるか、▽現在、後期高齢者は出産育児一時金の費用負担をしていないが、当該費用を医療保険制度全体で支え合うことをどう考えるか、▽妊産婦が適切に医療機関を選択するため、サービスに応じた出産費用の見える化をどう考えるか――という3つの論点を提示した。
 事務局案に対して各委員からは、「出産時における適正な費用の在り方、そして、妊産婦の適切な医療機関選択の意味からも情報の見える化が不可欠」「出産育児一時金増額は少子化という国難への対策であり必要。負担については国民全体で支えるべき」「出産育児一時金が引き上げられることで分娩費用の引き上げが起きることも想定される。高い地域が更に高くならないように保険適応としてはどうか」などとする意見が出された。

2022年10月号-1
物価高騰の影響を受けた事業者負担の軽減を求める
日本病院会
 日本病院会(相澤孝夫会長)は9月30日、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」について行った実態調査の結果を発表した。
 国は新型コロナの感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援するため、自治体が地域の実情に応じて、きめ細やかに必要な事業を実施できる臨時交付金を創設している。また、コロナ禍で原油価格や電気・ガス料金を含む物価の高騰の影響を受けた生活者や事業者の負担の軽減をすることを踏まえ、「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」を2022年4月に創設された。
 今回の調査では、医療機関の臨時交付金の活用実態をまとめた。調査の期間は、8月16日〜26日で、2410病院に回答を求め、511病院から回答が寄せられた(回収率21.2%)。

●臨時交付金「申請していない」が91.0%

 調査では、「臨時交付金を医療機関が活用できる通知を知っていたか」との問いには、62.6%が「知っている」と回答した。しかし、「臨時交付金の申請を行ったか」との質問に91.0%の医療機関が「申請していない」と回答した。申請を行わない理由として、「地方公共団体が補助対象としていない」「地方公共団体から病院へ案内がない」など、自治体側の対応の問題が浮き彫りとなった。
 また申請をしたと回答した29医療機関のうち、実際に臨時交付金を受給できたのは20医療機関(69.0%)、3割にあたる9医療機関は受給ができなかった。受給できていない理由として、「人口規模などにより臨時交付金があまり多くなく、経済対策を優先して臨時交付金が活用される予定」「現段階では交付決定通知が来ていない」などがあった。
 臨時交付金について各医療機関の意見も求めており、「国は価格高騰で影響を受けた医療機関などへの支援も考慮するようにと交付金の扱いを周知しているが、現実的には、住民や事業者などへの対策にとどまっている」「医療機関や介護事業者などには、新型コロナウイルスやウクライナ情勢により収支が悪化していても直接的な支援がない状況が続いている」「値上げで苦しんでいる事業者は数多く、国への直接申請には『医療機関用』と明確にした枠がないということが地方自治体の考え方なので、難しいと思う」――などの声が見られ、臨時交付金の在り方が、医療機関の実態にそぐわない現実が明らかになった。

●病院経営の支援を求める要望書を提出

 日病では、こうした状況を踏まえ9月30日、加藤勝信厚生労働相に「コロナ禍において物価高騰等の影響を受けている病院への交付金の活用」に関する要望書を提出した。
 そこでは同会が実施した前述の調査結果を報告。交付金を申請した医療機関はごく少数であったことが明らかになったとし、その要因として、「都道府県が病院を補助対象としてないこと」「都道府県が病院に交付金申請に関する案内を行っていないこと」が大半を占めていると指摘した。
 これまでも「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」などの医療機関への活用について通知は発出されている。要望書では、「これらの交付金を物価高騰の影響により経営が一層困難になっている病院の経営を支援する体制が構築されるよう、改めて都道府県などへ周知・徹底するように求めた。

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