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2013年09月号-2 |
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都市部の強みを生かした地域包括ケアシステムの構築を |
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〜厚労省「都市部の高齢化対策検討会」が報告書(案) |
厚生労働省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」は9月20日、報告書「都市部の強みを生かした地域包括ケアシステムの構築」(案)を示した。「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年の医療・介護サービス提供体制の姿として、「『病院完結型医療』から、地域全体で治し支える『地域完結型』の医療と地域包括ケアシステムの構築へ」を挙げており、「2025年の高齢者像の変化と医療・介護サービス提供体制の姿を併せ考えれば、都市部はその強みを生かした地域包括ケアシステムの構築を目指すべき」としている。 報告書では、後期高齢者が2025年には約2,200万人に達し、特に東京都・神奈川県・大阪府・埼玉県・千葉県・愛知県の都市部6都府県で急増することを指摘。団塊の世代を中心とした2025年の高齢者像の一つとして、在宅医療・介護に対する高いニーズがあることを挙げている。
■ 都市部では、回復期・慢性期の受け皿が少ない
2025年の医療・介護サービス提供体制の姿については、「病院完結型の医療」を「かつての医療」としたうえで、地域全体で治し支える「地域完結型の医療」が求められていることを指摘。特に都市部では、「回復期・慢性期の受け皿が少ない状況にあり、在宅医療・介護の必要性が大きくなっている」として、「今後、病院・病床機能の分化・連携が進められる中で、急性期医療から在宅介護までの一連の流れにおいて、“川上”に位置する医療提供体制の改革と合わせて、“川下”に位置する地域包括ケアシステムのさらなる充実を進めていくことが必要となっている」と強調している。
■ 病院に対して段階的に在宅診療部門の設置を求める 報告書の表題にもなっている「都市部の強みを生かした地域包括ケアシステムの構築」については、▼集住、▼多様な人材、▼整備された生活インフラ、▼活発な企業活動──などの都市部の“強み”を最大限に生かした地域包括ケアシステムを追求すべきとしたうえで、在宅医療・介護を徹底して追求する必要性などを示している。 その中で、在宅医療・介護連携については、在宅医療を支える拠点として、緊急時の往診や看取りなどの役割を積極的に果たす在宅療養支援診療所の整備や機能強化を図る必要性を指摘し、「在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所の整備のみならず、都市部に多く存在する既存の医療機関、特に病院の在宅医療への参画や支援を促すことを検討すべきである」としている。 この関連では、多くの医療機関が在宅医療に参画することを促すため、「例えば、地域で中核をなす病院に対して段階的に在宅診療部門の設置を求めることや、医師臨床研修制度の到達目標において在宅医療の実施を必修項目とすることで、都市部に多数存在する臨床研修病院に対し、在宅医療への取組を促すことについても検討すべきである」と指摘している。 |
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2013年09月号-1 |
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消費税引き上げ判断の「論点とその留意点」を示す |
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〜経済財政諮問会議で民間議員 |
「経済状況等を総合的に勘案するに当たって、有識者議員の提案等を踏まえて、諮問会議としての意見を取りまとめていただきたい。10月上旬には、私が消費税率引上げについての判断をしたい」――。首相官邸によると、安倍晋三首相は9月13日の経済財政諮問会議で、こう述べた。この日の会議では、民間議員4人が「消費税率引上げ判断に当たっての論点とその留意点」を示した。消費税率を引上げた場合、家計の負担は6兆円程度の支払増が見込まれるものの、「社会保障の充実等によって、経済へのマイナスの影響は減殺される」などとしている。 それによると、景気の現状と見通しについて、「設備投資の動きには持ち直しの動きが見られ、アベノミクス効果によって、景気は上向いてきている」などと説明。物価動向や家計所得の動向については、「デフレ状況ではなくなりつつある。実質可処分所得の増加が持続的回復の鍵」などと指摘している。 一方、財政状況の悪化を挙げ、社会保障については、「今後、消費税増収分と給付の重点化・効率化により必要な財源を確保しつつ進められることとされており、着実な進展が望まれる」としている。
■ 家計負担6兆円増でも、「社会保障充実でマイナス影響は減殺」
引上げの影響では、経済社会面に関し、▼平成26年度の家計の負担は、消費税率を引上げた場合、6兆円程度の支払増が生じると見込まれる。なお、社会保障の充実等によって、経済に対して及ぶマイナスの影響は減殺される。▼社会保障・税一体改革の着実な実施は、若年層・子育て支援を含む全世代型の給付の拡充、安定財源の確保による将来不安の解消を通じて消費の拡大に資する。ただし、低所得者への影響に対する配慮、物価や賃金の動向、税負担が与える影響が世帯類型ごとに異なることへの目配り等が必要である――などと説明している。 そのうえで、引上げ判断の選択肢と必要になる対応を示し、予定通り引き上げる場合については、「消費に影響を与えるリスクがあるため、景気の下振れに対応するとともに、その後、力強く成長軌道に復帰するよう、あらゆる政策手段を総合したポリシーミックスを講じて万全を期すことが不可欠。消費税率引上げ後も今後10年平均で実質成長率2%程度、名目成長率3%程度を目指していくことが最重要課題である」などと強調。「家計の所得環境を改善させる経済の好循環の実現を柱とする包括的財政金融政策」として、@平成26年度前半の需要減を下支えするとともに、その後の成長軌道への復帰を確実なものとする。A価格転嫁円滑化対策、資金繰り対策等を進める。B賃金・雇用の中期的拡大を政府の重点課題に位置付け、その環境整備に努める――など7項目を挙げている。 一方、消費税率引上げを変更する場合には、財政健全化や社会保障・税一体改革など関連する政策体系の全体像について、「わかりやすく、かつ、早急に示し、必要となるアクション(税法等関連法令の改正、財政健全化目標の変更等)を実行していく必要がある」などと指摘。社会保障改革の進め方とその財源確保についても、改めて明らかにする必要性を挙げている。
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